2012年5月14日月曜日

麻酔の種類と副作用 [痛み・疼痛] All About


麻酔とは

全身麻酔の静脈麻酔を受けると、数秒で意識を失い麻酔状態になります

手術のストレスを取り除くため、薬を使って痛みや体の反射を起こさない方法を麻酔といいます。脳や脊髄神経、手や足先の末梢神経まで、一時的で、しかも後遺症を残すことなく神経の働きを抑制する薬(麻酔薬)を使用して、手術をしても無意識、無痛、動かない、体の反射を起こさない、などの状態を得るのです。

麻酔法の種類

麻酔法は、意識が無くなる全身麻酔法と、意識はあるが痛みを感じなくなる局所麻酔法の2つに大別されます。

全身麻酔とは

私達が夜、眠っている間の意識はありません。しかし、もしナイフでお腹を切れられたら、痛くて反射的に声をあげたり起き上がってしまい、眠り続けることはできません。これが自然な眠りです。一方、全身麻酔では、手術のような痛みを伴う大きな刺激やストレスを受けても、無意識、無痛、体は動かない、しかも記憶に残らない状態を保ちます。全身麻酔は、麻酔薬を使って痛みや出血などの手術ストレスから患者様を守り、手術がスムーズに行える環境を整える方法なのです。

注射を嫌がる子供には、吸うだけの吸入麻酔が行われます

全身麻酔には、麻酔ガスを吸うことで麻酔する吸入麻酔法と、点滴から麻酔薬を注射して麻酔する静脈麻酔法があります。注射に抵抗がある子供やパニック状態の患者様の場合には、吸うだけで麻酔がかかる吸入麻酔法が選択されます。代表的な麻酔ガスはセボフルランやイソフルランで、軽く鼻を突くような臭いがします。

点滴が受けられる患者様には、麻酔薬を点滴に注入すれば数秒で意識を取り除き、麻酔状態になる静脈麻酔法が行われます。代表的な静脈麻酔薬はディプリバンです。この薬は患者様の年齢や体重から薬の血中濃度を予測して、投薬量を決定できる専用器で注入されます。


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全身麻酔のメリット

理想的な全身麻酔の特徴は、副作用なく元にもどる無痛、健忘、無意識、不動状態で「4つのA」と呼ばれます。
  • Analgesia     無痛
  • Amnesia    健忘
  • Anesthesia  無意識
  • Akinesia     不動

「4つのA」を達成した全身麻酔法を行えば、痛みを感じることなく、自分が知らない間に手術が終わり、嫌な記憶が残りません。また、手術を受けている間は体を動かせないので、外科医は非常に手術が行いやすく、患者様はより安全に手術を受けることができるのです。

全身麻酔の副作用・リスク・合併症

麻酔の副作用には吐き気・嘔吐、めまい、ふらつき、頭痛がよく起こります

日本麻酔科学会が行った1999~2001年度麻酔関連偶発症例調査結果によると、麻酔が原因で死亡する割合は22万症例に1例。麻酔専門医が適切な管理下に全身麻酔を行えば、麻酔は極めて安全です。「麻酔は怖い」「麻酔から眼が覚めなかったらどうしよう」と心配されるのは、麻酔そのものが良くわからないから。実は、その副作用はほとんどが軽微で一過性のものであり、手術後48時間以内にほぼ解決します。

1. 全身麻酔の軽い合併症
もっとも発生頻度が高い合併症は、喉の痛み、声のかすれ、頭痛、吐き気、めまい、腰痛、眼の違和感、手術後の震えなどです。

喉や声の異常は、全身麻酔中に口から気管に向かって挿入される細い管が声帯や喉に炎症を起こし、術後の喉の痛みや声のかすれとして起こります。頭痛、吐き気、めまいは、手術から体を守るために投与された麻酔薬や医療用麻薬、手術そのものが原因で起こります。

腰痛は、手術中に長時間、同じ姿勢を取り続けることが原因。麻酔中は寝返りや腰を動かすことができないため腰椎に負担がかかり、麻酔から目覚めてから腰痛を自覚することが多いようです。

全身麻酔と目の違和感には、深い関係があります。全身麻酔中は体を動かさないだけではなく、まばたきも一切しません。よって、� ��開きのまぶたで麻酔にかかってしまった場合に角膜が乾燥して、麻酔から目覚めたときに目がコロコロして違和感を感じることがあります。


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また、患者様はほぼ裸の状態で手術を受ける上、全身麻酔薬の作用で体温を保つ作用が低下し、出血や水分の蒸発で、一層体温が低下します。この状態で全身麻酔から目覚めると脳もその低体温を感知し、一気に筋肉を震わせて体温を上昇。結果、しばらく体がブルブル震えて止まらなくなることがあります。

2. 全身麻酔の中等度の合併症

抜けた歯が気管に入ってしまう事があります。手術前に麻酔科医に知らせましょう

多くはほぼ一過性で完全に回復する合併症ですが、適切な治療が行われないと重度の後遺症を残す場合があります。歯の損傷、アレルギー、血圧の上昇と低血圧、神経障害などが挙げられます。

人工呼吸を補助する細い管を口から気管に挿入するときに、歯を損傷することがあります。もし、ぐらついている歯があれば、麻酔科医にあらかじめ伝えましょう。なぜなら全身麻酔中や麻酔が覚めた直後でぼーっとしている時に歯が抜け落ちると、誤って気管に入ってしまい、重症肺炎を引き起こすことがあるのです。

手術では、手術器具や手袋、管やチューブ、麻酔薬や抗生物質などの薬が使用されます。普段の生活では全く触れることのない物質に対して、アレルギーをおこす可能性があります。しかし、アレルギーが起こっても麻 酔医が早期発見し、呼吸と循環を管理することで重症化を防ぐことができます。

また、出血量に応じて血圧は低下しますし、手術操作によって反射的に高血圧や低血圧を引き起こすこともあります。麻酔医は点滴や輸血、血圧を上げる薬で低血圧に対応し、高すぎる血圧にも治療薬で即座に対応します。

神経障害は、体を動かさないことによって起こる手足のしびれや麻痺です。神経が手術中に伸ばされたり圧迫されて起こりますが、通常、数日から数週間で戻ります。

3. 全身麻酔の重度の合併症

全身麻酔の最も重症な合併症は、脳障害、心臓停止、死亡です。

しかし、麻酔による死亡発症頻度は22万人に1人と極めて少ないです。特別な持病があり、例えば遺伝的に麻酔薬にアレルギーがあった場合など、極めてまれな不運が重なった場合にのみ起きると考えてよいでしょう。命にかかわる麻酔薬に対するアレルギー反応で高熱が出る悪性高熱症は5万人に1人、心臓停止に直結する、血の塊が肺血管を閉塞する肺塞栓症は10万人に3人です。


発掘のseperationの不安

上記の数少ないリスクを含めると、他の多くの治療法と同様、全身麻酔も100%確実に安全だと断言することはできません。しかし、全身麻酔は適切なモニターと麻酔科医の緻密な監視があれば、安全性が非常に高いことはご理解いただけるのではないでしょうか。重度の合併症は非常にまれなのです。

局所麻酔とは

のどに局所麻酔を行なうことで、胃カメラもスムーズに受けられます

末梢神経に局所麻酔薬を注入して、意識を保ったまま無痛を得る麻酔法です。

局所麻酔には、局所麻酔薬をスプレーで噴霧したり注射することで麻酔する表面麻酔や浸潤麻酔、脊髄神経や太い神経の近くまで針をすすめ、局所麻酔薬を注入する伝達麻酔があります。胃カメラや大腸ファイバーでは、のどや肛門を表面麻酔することでストレスが少なく手技が受けられます。抜歯や小さな傷を縫う時には浸潤麻酔が行われ、無痛治療ができます。

伝達麻酔には、腰から注射する脊椎麻酔(せきついますい)や硬膜外麻酔(こうまくがいますい)、脇から注射する腕神経叢(わんしんけいそう)ブロックなどがあります。

虫垂炎で腰から脊椎麻酔を受けた方も多いはず。また、硬膜外麻酔は全身麻酔に併用して手術中・術後の痛み� �めとして活躍しますし、現在では無痛分娩に適応。腕や手首の傷では脇から注射する腕神経叢ブロックで、執刀医とエックス線を確認しながら手術を行なうことも可能です。

局所麻酔のメリット

局所麻酔をうまく使えば、麻酔の副作用を減らせます


局所麻酔を受けるメリットは大きく3つあります。
  • 意識があること
  • 全身に及ぼす影響が少ないこと
  • 麻酔に必要な機器が少なく、全身麻酔より安価であること
意識があり、全身に影響する薬を使用しないので、呼吸や循環が安定します。また、使用される局所麻酔薬はアレルギーが少なく、安全性が高いこともメリット。日帰り手術にも有益で、手術後鎮痛にも優れています。料金は2時間以内の全身麻酔が61000円~であるのに対し、脊椎麻酔では8500円。低料金で無痛が得られることも局所麻酔の長所です。

局所麻酔の副作用・リスク・合併症

  • 意識があること
  • 麻酔の効果が不確実であること
  • 幼児にはできない
  • まれに重篤な合併症が発生する
局所麻酔は意識があるから安全性が高いともいえますが、一方で聞こえてくる手術機器の音が気になったり、手術中の記憶ストレスを残してしまうことも。また、患者様個人の個体差や麻酔科医の技量によって局所麻酔の効果に差がでることもあります。当然、注射で局所麻酔薬を体に注入するので、注射を嫌がる小児には不向きです。また、頭や心臓、肺の手術など、侵襲の大きな手術には使用できません。

心電図、血圧測定、パルスオキシメーターなどのモニターが、麻酔の高い安全性維持に役立ちます


意識があるのだから合併症は少ないのでは?と思われがちですが、鎮静剤を併用した局所麻酔は、まれに呼吸不全から心臓停止にいたる重篤な合併症を引き起こします。起きているような眠っているような、痛みは感じないけれど身動きはうまく取れず、ボーッとしたような局所麻酔で、迷妄麻酔と呼ばれます。迷妄麻酔は妊娠中絶や胃カメラ処置で行われることがありますが、十分なモニター管理下に麻酔が行われないと、不測の呼吸不全を見逃し、低酸素から心臓停止をきたすことも。アメリカ合衆国では、手術室以外で麻酔科専門医以外の者による鎮静剤の使用で、6年間に89名が死亡したという報告もあります。

全身麻酔、局所麻酔ともに、定時的に測定する血圧・心拍数モニター、心電図、体内の酸素を連続測定するパルスオキ� ��メーターなどの標準的モニターを装備し行われることが、麻酔の安全性を確保する最重要条件です。そして、熟練した麻酔科医がこれらのモニターを監視し、患者様の状態を常に把握、変化する手術状況に応じた的確な判断から最適な処置が実行されることで、麻酔の高い安全性が確立しているのです

参考文献:
知らないと危ない麻酔の話 フランク・スウィーニー 瀬尾憲正 監修・訳



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